『甲状腺機能障害』と聞くとなんだか得たいの知れない怖さを感じるかも知れませんが、人間は自分の身を守るために、知らないものに恐怖を感じるように出来ています。
ですから、『甲状腺機能障害』を正しく知り、正しい対処が出来るようにしましょう。
基本的に『甲状腺』とは新陳代謝を促すホルモンを出すところで、『甲状腺機能障害』は大きく『機能更進症』と『機能減退症』に分けられます。
『甲状腺機能更進症』は新陳代謝が必要以上に早く進む為、身体の機能が行き過ぎてしまいます。対して『甲状腺機能減退症』は新陳代謝不良に陥る為に、いつまでも身体の入れ替わりが遅く、なかなか疲れが取れないという状態です。
ここではその症状やセルフチェック、女性と男性、子供の甲状腺機能障害について知っていきましょう。
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甲状腺機能障害の症状とは?チェック方法は?
甲状腺機能障害の症状は主に二つに分かれます。
ここではその状態と症状をチェック項目にして列挙していきます。
《甲状腺ホルモン分泌過剰状態の時》
- 寝たはずなのに朝から疲労倦怠感がある
- 異常に汗をかきやすい
- 暑がり
- 平時でも動悸がする
- 手足のふるえがある
- 甲状腺の辺り(のど)が腫れている
- 過剰な食欲
- イライラする
- 頭が痒くなる
- 口渇(ドライマウス)がある
- 寝付きが悪い
- 継続的な微熱
- 息切れしやすい
- 眼球が突出してくる
- 顔が赤い
《甲状腺ホルモン分泌過少の時》
- 継続的な疲労倦怠感
- 顔が青白い
- 汗が出ない
- 寒がり
- 徐脈(脈拍数が少ない)
- 身体がむくむ
- 甲状腺のある場所(のど)が腫れる
- 集中力が続かない
- 皮膚の乾燥
- 声が出ずらい
- いつも眠い
- やけに物忘れしやすい
- 早く動くことが出来ない
- 髪の毛が抜けやすい
- 便秘(排便に力が入らない)
- 筋力の低下
- 粘膜の乾燥
以上二つの状態の症状は一つ一つまばらに出るのではなく、複合的に合わさって発現します。
ですからいくつかの症状がどれも当てはまる場合は一度病院で検査をしてもらいましょう。血液検査をして現在の状態が分かります。
甲状腺機能障害の原因は?
甲状腺機能障害の原因は3つに分けられます。
- 甲状腺ホルモンが過剰分泌している状態(バセドウ病など)
- 甲状腺ホルモンの分泌が少ない状態(ハシモト病など)
- 甲状腺腫瘍がある状態(癌など)
そしてそれらがどんな原因で罹患するのかは以下に分けられます。
- 遺伝的なものが発現
- 癌や外傷が甲状腺に出来る為
- 先天性(生まれつき)のもの
- 出産直後の一過性のもの
- ヨードの過剰摂取による一過性のもの
- 甲状腺の病気の治療薬による副作用
出産直後やヨードの過剰摂取などの一過性のものであれば自然緩解していくのですが、それ以外のものは体質的要因が多いのが特徴です。
また市販薬である風邪薬に配合されているエフェドリンは甲状腺機能更進症の方には禁
忌ですので、専門の病院で受診するようにしましょう。
甲状腺機能障害の男性、女性、子供の特徴について
一般的に甲状腺機能障害は約5:1の割合で女性に多い病気です。
それではそれぞれどのような傾向があるのか見ていきましょう。
甲状腺機能障害の女性傾向
女性の身体は月経に代表される『ホルモンバランス』と密接に関係しており、男性と比べてホルモンに関しては少し複雑な機構をしています。
脳下垂体から司令が出され、各臓器から女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)を始めとするインスリンホルモン、抗ストレスホルモン、成長ホルモン、甲状腺ホルモンなどが分泌され、身体は健やかに保たれていますが特にストレスなどの影響で女性ホルモンバランスが乱れると
それに伴う精妙な各ホルモンバランスも狂いを生じやすくなる為に、甲状腺にも負担が掛かりやすい為です。
甲状腺機能障害を起こす年令が18~45歳くらいまでに多いのはそのような理由からです。
特に甲状腺機能減退症(ハシモト病)からシェーグレン症候群という水分代謝機能の低下により目鼻口などの粘膜が乾燥する症状を擁するものもあります。
ですから親族などに甲状腺機能障害をお持ちの方は、普段の生活から不摂生をせずに規則正しい生活を心掛けましょう。
甲状腺機能障害の男性傾向
女性に比べると20%程の割合ですが、男性の甲状腺機能障害の方もたくさんいます。
主にストレスから発症しやすい傾向があります。
ストレスを感じると脳下垂体からの指令により、副腎から抗ストレスホルモンのコルチゾールが分泌されます。
コルチゾールは交感神経を刺激して、身体の緊張状態を持続させます。
通常、夜は副交感神経は優位になり、身体を休め、甲状腺ホルモンの働きにより新陳代謝を促しますが、身体の緊張状態が持続すると甲状腺ホルモンの分泌が悪くなり、それにより甲状腺機能障害を引き起こします。
甲状腺機能障害の子供の傾向
子供の場合、先天性(生まれつき)のものが多い傾向があります。
『クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)』といって、生まれつき甲状腺の働きが弱く、出生児3000〜5000人に1人の割合だといわれています。
原因は胎児の身体形成の時期に甲状腺がうまく作られなかったり(無形成や低形成)、異所性甲状腺機能障害といって、定位置以外の場所に甲状腺のようなものが出来てしまったり、甲状腺ホルモンの合成の障害、また、甲状腺に指令を出す脳下垂体や視床下部に発育不全などがあります。これらの発育不全を起こさないように妊娠初期に葉酸の摂取を心掛けるよう、厚生労働省からも呼び掛けがなされています。
新生児マススクリーニング検査
現在『新生児マススクリーニング検査』といい、先天的な病気を早期発見する為、生まれてから1~4週間の新生児全員に検査が行なわれています。
(検査対象の病気は甲状腺機能障害のほか、フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ガラクトース血症、副腎皮質過形成症、先天性副腎皮質過形成症)
ですから症状が発現する前にそのほとんどが発見されますが、稀にマススクリーニングで発見できない症例(TSH(甲状腺刺激ホルモン)遅発上昇型など)もあります。
マススクリーニング検査で異常が見られた場合、生後2ヵ月以内の甲状腺機能を健やかに保つことが知能の発育に極めて重要と考えられているので、まず治療を開始することになり、甲状腺ホルモン薬の内服を行います。3歳後に一度内服を中止して、再検査が行われます。
症状としては黄疸や、便秘、臍のヘルニア、巨舌、泣き声のかすれ、手足の冷感、知能低下や発育不全などが現れてきます。
そうならない為に適切に処置をしていく必要があります。
また市販の風邪薬などはエフェドリンという成分が甲状腺に負担を掛けるおそれがあるので、必ず指定の病院にて受診するようにしましょう。
甲状腺機能障害の治療方法や検査は?食事対策は? 検査の方法は?