クーラー病は冷房病とも呼ばれ、その名の通りクーラーの風に当たりすぎることで発症する現代病の一種です。症状としては冬の冷え性によく似ています。
夏場、特に暑くなる屋外の気温と、冷房の効きすぎた屋内(例えばオフィスなど)の温度差に身体がついて行けず、体温の調節が困難になることで、この病気を発症してしまいます。
今回は、クーラー病の原因を分かりやすく解説し、そのうえで治療の手立てや改善方法を伝授します。
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クーラー病の原因とは?
ご存じの方もいるかと思いますが、人間は恒温動物といって、外気温の変化に関わらず体温を一定に保つことができる動物です。
なぜそんなことができるのか、その秘密は、自律神経という器官の働きにあります。
自律神経とは、交感神経と副交感神経を合わせた総称で、クーラー病の説明に合わせて簡単な補足をすると、交感神経のとは、体温の上昇を抑制する神経機関で、それに対して副交感神経とは、体温を上昇させる神経機関です。
交感神経は特に、体が活発に動いている時や激しい緊張を強いられる場面で働き、それに対して副交感神経は、じっとしている時や心身ともにリラックスしているときに、必要に応じて働きます。
神経のバランスが崩れる事が原因
先ほど、人間は恒温動物であるという説明をしました。確かに人間の体は、先述の通り、自律神経の働きによって、外気温の変化にかかわらず一定の体温を保つことができます。これは、トカゲなどの変温動物と大きく異なるところです。
しかし、いくら恒温性を持っているとはいっても、激しい温度変化に余裕で対応できるほど、人間の身体は万能ではありません。
人間の体は、冬から春、さらに春から夏にかけて、少しずつ高くなる外気温の変化に合わせ、体の働きが変化していきます。
具体的には、体温が上がりすぎないように、体の中にこもった熱を逃がしやすいようにと汗腺が広がるという傾向があります。こうした変化も、自律神経の働きによるものです。
外気温の変化に対する耐性にも個人差があり、多少は気温が上下しても平気という人もいれば、暑かったり寒かったりとワガママな気温の変化が身体にこたえ、すぐに体調を崩してしまう人もいます。
急激な温度変化に対応できずに体調を崩した状態というのは、自律神経の働きが乱れてしまった状態です。
ここまで解説してきたように、外気温の上昇にあわせて体温を調整した体が、今度は冷房の効いた屋内に長時間滞在することで、その温度差に対応できず、自律神経の働きが乱れ、クーラー病を発症してしまうのです。
クーラー病の予防対策は?
前項にて解説した通り、クーラー病の原因は、自律神経の働きが乱れてしまうことにあります。つまり、この自律神経の働きを正常化できれば、おのずとクーラー病の症状は消えてなくなるのです。
発症してから正しく対処することももちろん大事ですがそれ以上に、クーラー病は〈予防が大事〉とされる疾患です。
正しく予防しなければ、つまり、日ごろから自律神経に負担を掛けないように心がけなければ、やがてはクーラー病が癖のようになってしまうという難点もあります。
つまり、一度でもクーラー病を発症してしまうと、二度目以降は(たとえ症状が一時的に緩和した後でも)また同じような症状を発症しやすくなるという厄介なリスクがあるのです。
この例えが伝わりやすいかどうかは分かりませんが、脱臼や肉離れなどのケガを一度でも発症すると、完治した後で無理をすれば、また同じ個所を痛めやすくなるのと似ています。
クーラー病が癖になってしまうことを避けるためにもきちんと予防する手立てを考えていきましょう。
まずは、冷房の温度設定を上げることが基本
言うまでもなく、これは大前提になります。激しい温度変化に身体をさらすことがクーラー病の原因になってしまうなら、その原因を失くせばいいのです。
暑がりな上司の目を盗み、エアコンの温度設定を高めに変更するというのはなかなか難しいことかもしれません。
でもだからと言ってやせ我慢を続ければ、そのうち身体が冷えてきて、頭痛や腹痛など身体的な異常、あるいは倦怠感など精神的な異常が出てしまいます。人生を豊かにするために働いているのに、職場で健康を害するようでは何もなりません。
できる限り、上司や同僚には室内の温度設定について真摯に相談するように心がけ、自分の訴えがどうしても聞き届けられないようなら、室温を変える以外の方法で、クーラー病の対策を取っていきましょう。
体を温めるための工夫
ここまで説明してきた通り、身体をむやみに冷やしてしまうことが、クーラー病の原因の一つです。
血行が悪くなると体温が維持できなくなり、身体のあちこちに不調が現れます。ということは、身体を温めることができれば、それがクーラー病の予防策になりますし、すでに発症してしまった場合でも、症状の改善につながります。
重ね着の工夫
冷えてしまった身体を温める工夫として考えられるのは、例えば上に一枚はおるものを用意するとか、腹巻を用意する手もあります。
上着は必要に応じて脱いだり来たりができますし、腹巻だって服の下につければ、他の人にはわかりません。ただ、夏はやっぱり薄着の季節ですから、特に女性は周りの目が気になるとか、クーラー病を警戒するあまりおしゃれを楽しめなくなると感じる人がいるでしょう。
そういう時は、頭寒足熱という言葉を思い出してください。
ご存じの方もいるかと思いますが、人間の体にとっては頭を冷やして足元を温めた状態というのが、最も理想的なパフォーマンスを発揮できる状態なのです。
クーラー病の予防策としては、頭寒足熱のうち、足熱の部分が特に重要です。身体を冷やさないために、足元をいかにして温めるかということが重要になります。
例えばひざ掛けなら、机の下に隠れるのが普通なので、見栄えを過度に気にする必要はありませんし、第一、仮に使っているところをみられたところで、それほど不格好ではありません。
あるいは、靴下を二重に重ねて履く方法も効果的です。これなら、よっぽど注意して見ない限り、まず他人にばれることはないので、オススメです。
加えて、冷え性の女性なら特に、レッグウォーマーを愛用している方も多いですね。それほど高価なものでもないので、クーラー病の症状に悩んでいるなら、ぜひ一度試してみてはいかがでしょう。
要注目! 生姜の力
また、身体の冷えを改善する効果があるとして、最近特に注目されているのが生姜の力です。
例えばシナモンティーなどは、コンビニでも売っている場合がありますし、わざわざ買いに行かなくても、市販されている生姜のチューブを携帯しておけば、いつも職場で飲んでいるお茶に生姜を混ぜるだけで簡単にシナモンティーを作ることができます。
もともと生姜は、冷え性の改善に効果があるとして注目されていましたが、冷え性とよく似た特徴を持つクーラー病の改善にも効果が見込めますよ。
食生活を改善することも重要!
飲み物の話をしたついでに、食生活を改善する重要性についてもここで説明しておきましょう。改善すると言っても、それほど難しいことではありません。いくつかのポイントさえ頭に入れれば誰にでも実践できることばかりです。
夏野菜は身体を冷やす
大前提として、クーラー病の症状に悩んでいるのであれば、身体を冷やすものを口にするのは控えるべきです。例えばナスやキュウリやトマトなどの夏野菜は、水分が非常に多いため、身体を冷やす食べ物として知られています。
夏バテに苦しんでいる時や、あるいは夏風邪で熱があるときなどは、こういった野菜を食べると良いのですが、クーラー病の症状に悩んでいるなら話は別です。
注意すべき飲み物
飲み物で例を挙げれば、コーヒーや牛乳も、アイスで飲めば身体を冷やすので、がぶ飲みするのはやめたほうが良いです。
朝ごはんが症状を改善する
加えて、ビジネスパーソンの間では軽視されがちなのですが、身体の冷えを改善したいなら、朝食の重要性に改めて着目すべきです。
朝起きた時には血糖値が下がった状態で、このままでは、体温を維持するエネルギーが足りません。血糖値の低下が、身体の冷えを招くのです。そのため、面倒でも多少は時間がなくても、とにかく何かを口に入れて、血糖値を上げてやる必要があります。
例えば、いっぱいのカップスープやココアを口にするだけでも大違いですし、朝食にバナナを組み合わせる方法注目されています。エネルギー補給に際し、優れた力を発揮してくれるフルーツです。
サウナに行ってみましょう!
すこし意外に思われるかもしれませんが、クーラー病の改善にはサウナが一役買ってくれます。クーラー病の原因は、自律神経の乱れにあるという説明をすでにしましたが、乱れた神経のバランスを整えるために、気持ちよく汗を流すことが重要なのです。
発汗も、自律神経がつかさどっている機能ですからね。普段、クーラーの効きすぎたオフィスなどで仕事を頑張っていると、汗をかこうとする体の機能がだんだんと衰え、これがクーラー病の発症につながります。
なので、休みの日には思い切ってサウナへ行き、気持ち良く汗を流すことで、体のバランスを整えてやるということが効果的なのです。気持ち良く汗を流すという意味では、適度な運動もクーラー病の改善に効果がありますよ。
夏でも湯船に使ってみましょう!
暑い夏には湯船にお湯を張らず、シャワーだけで簡単に入浴を済ませる人が多いかもしれません。おまけに、熱いからと言って冷水を浴びている人はいませんか? 気持ちは分かりますが、冷水を浴びると体は冷えます。
自分では気持ち良いつもりでも、度が過ぎれば自律神経に負担がかかります。特にクーラー病に悩んでいる人なら、多少は面倒でも入浴時には湯船にお湯をためて、じっくりと体を温める習慣を実践してみてください。
暖かいお湯につかることで血管が拡がり、血行が改善されることに加え、水圧の効果で、無意識のうちにふくらはぎのツボなどをマッサージできます。
このふくらはぎの筋肉には、全身に血液を巡らせる作用があり、近年では〈第二の心臓〉として注目されています。クーラー病でお悩みの皆様はぜひ、この第二の心臓をいたわってあげてください。そうすることで、クーラー病の症状が和らぎます。
入浴の時間を大切にすれば、仕事でたまった疲れを癒す効果も期待できますよ。
クーラー病の治療方法は?
クーラー病は、例えばインフルエンザのような重い病気とは違い、予防接種もなければ特効薬も開発されていません。さらに言えば、そもそもクーラー病という名はただの通称です。医学的に認められたものではないのです。
だから、体の不調を感じて病院へ行った人がクーラー病の疑いがあるといわれたところで、すぐに効果の出る治療が期待できるわけではありません。クーラー病の治療といえば、ある意味では風邪などと同じような対処療法が基本になります。
つまり、患者の症状に合わせて微熱や頭痛が収まらないなら解熱鎮痛剤を処方され、消化器官の不調を訴えれば胃腸薬を処方されるという具合です。あとは、私がここまでにしてきたような予防法や対処法などをアドバイスされることになります。
クーラー病は何科を診断すればいい?
クーラー病に関する悩みを相談する際、受診するのは内科が基本になります。加えて注意すべきなのは、クーラー病だと思い込んでいたのが実は別の疾患だったというケースです。
クーラー病そのものは(確かに厄介な症例でも)深刻にとらえるような病気ではないかもしれません。しかしながら、クーラー病だと思っていたのが実は夏風邪だったとか、もっと深刻な例では、インフルエンザに感染していたというようなことが、可能性としては考えられます。
その場合、病気の対処法が全く違ってきますし、重い感染症なら、他人に被害を広げてしまうリスクも考えなければなりません。重要なのは、自分の病状を決めつけすぎないことです。
確かに、体調不良を自覚した時点で、これはひょっとするとクーラー病かもしれないとかあるいは夏風邪の引き始めだとか、ある程度の予測を立てることは必要でしょう。そうでなければ、診療科を判断して病院へ向かうこともできません。
しかしながら、自分の見立てが間違っている可能性も当然ながらあるので、体調不良が数日続き、改善する見込みがなければ、無理をせずに病院へ直行してください。無理をすれば、さらに症状が悪化する恐れもありますので、油断は大敵ですよ。
一番手軽な予防対策は、30分ほど外でゆっくりジョギングを行うことです。汗をかくことで新陳代謝もよくなり、血流も改善されるます。
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