夏になれば巷のニュースに溢れる『熱中症』。
赤ちゃんの車の置き去りや独居老人の室内での悲しい事故の印象が強いですが、みんながなりやすく、また意外と知られていない合併症に掛かるとその後の生活に支障を生じるおそれがあります。
ここでは熱中症の症状や気を付ける期間、赤ちゃん、幼児や高齢者の注意点や大人との違いを踏まえて確認していきましょう。
目次(クリックするとスクロールします)
熱中症の症状とは?
そもそも『熱中症』とはなぜ起こるのでしょうか?
これは身体の恒常性維持機能(ホメオスターシス)と密接に関わっています。
私たちの身体は体温を含む身体の機能を一定に保つ『恒常性維持機能(ホメオスターシス)』が備わっています。寒ければ毛穴を閉じてブルブル震えて熱を産生したり、暑ければ毛穴を広げて汗を出して熱を放出します。
この働きを担っているのが『自律神経』です。
自律神経は『交感神経(昼間に働く神経)』と『副交感神経(夜に働く神経)』の二種類があり、『交感神経』が優位であれば活動的、『副交感神経』が優位な時は休息中というイメージでおおむね理解しやすいです。
身体が活動的になれば熱が産まれますのでそれを放出する必要があります。逆に夜眠る時は各臓器を冷やさないように身体は熱を貯めようとします。
熱中症の一つ目の原因はこの『自律神経バランスの乱れ』によるものです。
自律神経の乱れで体温調節機能が低下する
例えば雪山で遭難した人が凍傷のあまりに「暑い暑い」といって服を脱ぐシーンを見たことある人がいるかと思います。
重度の熱中症では自律神経バランスの乱れにより、上記とは逆の症状が現れます。身体は暑いはずなのに、『寒い、熱を籠らせなければ』となっている訳です。
ミネラルバランスの乱れ
またもう一つの原因としては血液中の『ナトリウム・カリウムバランスの乱れ』があります。
身体が汗を放出する際に、血液からナトリウム(塩分)を多量に消費します。汗はしょっぱいですよね。
それにより、血液中のナトリウム量が減少すると各機能に様々な障害を起こす訳です。
以上、
- 自律神経バランスの乱れ
- 血液中のナトリウム・カリウムバランスの乱れ
により様々な身体障害を起こすのが熱中症という症状となります。
症状による重症分類
熱中症にはその度合いにより重症度分類が定められています。
参照:日本救急医学会熱中症分類
図中の「C」「H/K」「D」の表記は、それぞれ障害臓器の頭文字を指す。
以下に詳しい症状を明記します。
頭痛やめまいは?
自律神経バランスの乱れとナトリウム・カリウムバランスの乱れから起こる頭痛とめまいは脳の血流不足から発症します。
脳には全身の血流の1/3が必要になりますが、血液中のナトリウム・カリウムバランスの乱れと汗による水分不足の為に血液中の酸素と栄養が乏しくなり、また血管が膨張し始めます。
それにより、それを元に戻そうと自律神経も過剰に反応し、脳に過剰に血液を流し込もうとしたりする為に膨張した血管が隣を走る神経に触れることでズキンズキンと頭痛がしたり、また逆に体内が暑くなったことにより血管が膨張し、血圧が急激に下がると脳に血流が足りなくなりめまいを及ぼします。
寒気や発熱は?
寒気や発熱は自律神経が異常をきたしたり、熱を放出する許容範囲を超えた時に起こります。
熱を放出する許容範囲を超えると熱が体内に籠る為に発熱します。またその状態が一定期間続くと自律神経が異常をきたし、「異常な発汗により放出した熱を取り戻さなければ!」身体が勘違いをし寒気が起こります。
腹痛や下痢、吐き気
これらは自律神経バランスの乱れと、恒常性維持機能(ホメオスターシス)の働きにより起こります。
とにかく暑いと身体は汗をかいて熱を放出していきますが、これにより血液中のナトリウム濃度が低下します。
ナトリウムは筋肉の収縮に必要なミネラルであり、これが不足する為に内臓の筋肉、特に大腸の筋肉がこむら返りを起こしたような状態になり腹痛を生じます。
大腸は蠕動(ぜんどう)運動というクネクネした動きをしていますから、特に影響を受けやすい訳です。
また下痢や吐き気、嘔吐は血液中のナトリウム濃度の低下により、機能の低下を恐れた身体が「正常に戻さなければ」と促す為に起こります。
汗をかくと水分が必要になりますが、同時に塩分も必要になります。
これは血液中のナトリウム濃度を一定に保とうと恒常性維持機能(ホメオスターシス)が働くからです。
この状態の時に水分、例えばお茶や水だけを摂り、ナトリウム(塩分)を摂取しないと身体は血液中のナトリウム濃度が水分によって薄まることを嫌がり、強制的に水分を排出させます。
これが『自発性下痢』という生理作用です。吐き気や嘔吐も同じ理由で起こります。ですからこのような時は塩分も一緒に補給する必要があります。
しびれ
しびれについては
- 血液中の水分不足
- 血液中のナトリウム不足
で起こります。
一つ目は手先足先などの末梢血管に7割以上血流が不足すると起こります。こちらは高齢者が多く、昔から頚椎や肩肘などに障害があり、一つの部位に血流不足が起こることが原因です。
熱中症のしびれで多いのが血液中のミネラルバランスの乱れにより起こるもので上記のように一つの部位ではなく四肢に共通して起こりやすいのが特徴です。(場合によっては併発するので片側から徐々に拡がることもあります)
血管が膨張し、うまく血流を全身に配することが出来なくなる為に起こります。
酷くなると内臓の血流も悪くなり重篤な症状を引き起こします。
こむら返り
比較的軽度な初期症状として起こります。運動中に起こるこむら返りと原因は一緒です。
血液中のミネラルバランスが崩れることにより筋肉の収縮がうまくいかなくなり、こむら返りを引き起こします。
暑い中での運動でこの症状が出た場合には速やかに休息を取りましょう。
熱中症は子供や高齢者がなると危険?
成人と比較しておおよそ3歳までの幼児と高齢者は熱中症の危険性が高まります。
幼い子供の場合、まだ身体が発育途中の為に体温調節機能が未熟です。具体的に3歳までに毛穴の数が決まります。南の地方と北の地方の方の毛穴の数を比べた時に、倍以上違うこともあります。
これは『汗腺の発達』による違いです。
南の地方の方は汗をかいて熱を放出する機能に優れ、北の地方の方は汗を出さずに熱を貯めようとする為に、身体が環境に合わせて成長する為です。この機能が未発達な子供は体内に熱が籠りやすい為に注意が必要になります。
高齢者の場合、加齢による自律神経の失調の為に暑さ寒さに対する反応がにぶくなるという特徴があります。
例えば熱湯に近いお風呂に入ったりするようなそぶりがあれば注意が必要です。知らないうちに熱中症になってしまい、反応の感知がにぶい為に気が付いた時には取り返しのつかない事態になりかねません。
ですから、特に独居老人の方はそれを自覚することと、周りが注意を払い様子を観察することが重要になります。
熱中症になったら後遺症は残る?
軽度の熱中症では特に後遺症はありませんが、重度の熱中症では後遺症が残る可能性があります。
全身症状に至る為、各臓器に影響を及ぼす可能性がありますが、特に注意すべきは腎臓です。
腎臓は簡単に説明するとザルのように血液を濾して老廃物の分別をする臓器ですが、ここに熱中症によって濃くなった血液を流すと負担が掛かる為です。
例えば水をザルに流してもザーとすぐに流れていきますが、はちみつをザルに開けるとねっとり絡み付くのと一緒です。するとザルの目が詰まりやすくなり、負担が掛かり、老廃物がうまく濾過されない為に許容範囲を超えた腎臓は破壊されます。
破壊された腎臓は自己修復能力を失い『人工透析』を余儀無くされます。
人工透析とは機械で腎臓の働きを担うものですが、人体のように精妙な働きが難しい為、微量なミネラルなども濾しとってしまい常にだるいなどの副作用が生じやすくなる他、腕に人工血管を埋め込んだり、二日に一度4~5時間ベッドで寝たきりになり透析を受けなければ生命を維持できなくなります。
また腎臓のみならず、他の臓器も障害を起こした場合、その辛さは二乗三乗していきます。
そうならない為にも普段から『注意一秒ケガ一生』の気持ちを忘れずに過ごしていきましょう。
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