漢方で自律神経失調症は治ります。
適切に漢方で対処していけば鬱(うつ)、更年期障害、ほてり、動悸、不眠など自律神経失調症と呼ばれる症状は軽減され、病院の薬を服用されている方も離脱していくことが出来ます。
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まず“漢方”というのは東洋の“自然医学”のことです。漢方薬を使うのは漢方医学の一つの方法であるということで、それが全てではありません。
例えば糖尿病で病院に行った場合、薬の他に食生活や運動の指導が入ります。
その期間は3~6ヶ月程で経過を見ていきます。漢方も同じで漢方薬だけではなく、その生活習慣の改善が非常に重要になります。不自然な生活習慣を続けた結果が今の身体の状態になります。
例えば、ストレスが原因で不眠になったとしたら、漢方薬だけを服用しても治る訳ではありません。その原因となるストレスにどう対処していくかが鍵となります。
その辺りも含め、まずはそのメカニズムである自律神経失調症について知っていきましょう。
目次(クリックするとスクロールします)
自律神経失調症とは?
<自律神経失調症の状態とは?>
① 自律性失調症とは、文字通り『自律神経が失調した状態』です。
では『自律神経』とは一体なんのことなのでしょうか?
ネットで見てもなんだか専門用語が多くてわかりずらいですよね。
『自律神経』とはこれも文字通り『自分で律している(自分で稼働している)神経系の働き』のことで、そういう神経が物質として体内にある訳ではありません。
私たちは寝ている間でも呼吸をして生きています。
これは『身体が自律して呼吸を調節してくれている』という働きによるものです。
ですからここの機能が失調をきたすと過呼吸になったり、それが動悸に繋がったりします。
『自律神経バランスが崩れ(失調して)出た症状』という訳です。
自律神経の2つの働き
1つは昼だから活動しよう!という『交感神経』、もう1つは夜だから休もうか、という『副交感神経』と呼ばれる働きです。
活動と休息、この2つのバランスを保って私たちは健康を維持しています。
これが『自律神経バランス』と言われるものです。
例えば、夜なのに自律神経が『昼だ!』と勘違いすれば不眠になりますし、昼なのに『夜か…』となれば倦怠感や鬱(うつ)状態になります。
その原因は主に『ストレス』から起こり、人間関係が多いですが、暑さ寒さなどの環境の変化も人間にとってストレスになります。
『ストレス』とは、一体何者なのでしょうか?
実はストレスが無いと人類は滅んでしまいます。ストレスとはあらゆる環境に適応して生きていく為に必要なシステムなのです。
ストレスを感じた時、人はそれを克服しようとそのストレスに耐性を付けていきます。それを乗り越えた時に少し身体は強くなり、環境に適応していきます。筋肉と一緒です。そうやって私たちは成長してきました。
生きる為に自分で食事をして、お着替えが出来るようになって、トイレを覚え、自転車に乗れるようになり、学校で集団生活を学び、勉強をして、大人になる訳です。
しかし、ストレス社会と呼ばれる現代にはあらゆるストレスが溢れています。
周りの人と上手くいかない。自分の思う通りにならない。夜勤をして本来休まなければならない時間に活動しなければならない。転勤などで環境の違う地域や職場に行くなど。
Aさんの例
一つ例を挙げます。
Aさんはバリバリのキャリアウーマンです。
30代になり、去年に夫の転勤で東京から札幌に引っ越しました。
それに伴い、Aさんの会社も融通をきかせ、支店の管理職として抜擢してくれました。
意気揚々と札幌に向かったAさん。しかしその半年後には生理痛が酷くなり、生理前のイライラが多くなってきました。
加えて、言うことの聞かない部下、理不尽な上司、それが原因で終わらない仕事により、家でも寝る間を惜しんでPC作業を行い、休みの日にも会社へ行くようになりました。
その頃から寝付きも悪くなり、睡眠時間は4時間程で朝起きると寝汗でぐっしょりという時もありました。
Aさんはこの時、「化粧の乗りが悪くなったな…寝ていないからかな…」と感じていました。
そうした日々が続く中、お腹が妙に張るようになり便秘になりました。
それに伴い毎日のように頭痛が続き、些細なことでもイライラして頭が働かなくなり、家庭では夫に当たる毎日が続きました。
そしてその半年後、Aさんは不眠、動悸、冷え性に悩まされるようになり、上司に促され初めて心療内科に行くと『自律神経失調症』と診断されました。
加えて鬱(うつ)状態でもあると医師は言います。こうやってAさんは休職を余儀無くされました。さてこの時、Aさんの身体の中ではどうなっているでしょうか?
ここでのポイントは『環境の変化』です。暑さ寒さもストレスになります。加えてAさんは職場の環境もガラリと変わり、責任も重くなりました。
このような状態の時、身体の中では腎臓の上にある副腎から抗ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されます。このホルモンは交感神経を刺激するもので、身体を臨戦態勢に持っていくもので、「やるぞ!」と熱意に溢れている状態です。
しかしこれをマラソンに例えると、Aさんは24時間中、20時間走り続けたことになります。
そんなプレッシャーの中で臨戦態勢を続けると当然エネルギーは枯渇していきます。
Aさんは食事にも気を付けていましたが、交感神経が過剰な状態では胃腸は上手く働かなくなり、新陳代謝が失調しお腹が張り、便秘になりました。
次に日々減り行くエネルギーに対し、身体は頭痛などの痛みによるシグナルを警鐘し続けましたが、それでもAさんは働き続けました。
結果、Aさんの中のエネルギーは無くなり、抑鬱状態となった訳です。
1つの例えですが、概ねこのようなケースは多いです。
勘違いしないでいただきたいのが、Aさんが弱いだけなのではありません。
時代による急激な生活環境の変化が原因です。
環境への順応が大切
これに対処するには最初から最悪のケースも想定し、転居、地域差、仕事の変化を全て変えるのではなく、一つ一つストレスに慣らして環境に適応していくことが大切です。
例えば、転居後の仕事の復帰は土地に慣れてからにする。
予め転勤候補地に旅行に行く、その職場の挨拶に行く。
その土地の食べ物に慣れるなどです。
そうはいっても中々難しい場合もたくさんあります。
ですから症状が重くなる前から、気になる症状が出てきた時点で漢方薬などを用い対処していく必要があります。
これは『セルフメディーケーション』といって現在国の政策として取り組まれていることです。
では実際にどんな漢方薬があるか見ていきましょう。
自律神経失調症に効果がある漢方薬は?
ストレスを感じると身体の機能が失調しますが、漢方ではそれを『気滞(きたい)』と呼び、気の流れが滞った状態と捉え、血液不足である血虚、血液の流れが滞って血液の汚れた状態である瘀血が生じると考えます。
そしてそこから様々な症状が生まれてきます。
色々な症状に漢方薬は対処出来ますので、ここでは症状別に漢方薬をご紹介します。
また更年期は様々な症状が付随しますので症状別にご覧ください。
●不眠●
不眠は寝付きが悪いものと中途覚醒してしまうものの2つがあります。
①酸棗仁湯
安神剤と呼ばれる酸棗仁が主薬の漢方薬です。
気持ちを落ち着かせて入眠に導きます。
②加味帰脾湯
『気血両虚』と呼ばれる証に用います。
血が不足すると不安感が募り、結果としてあれこれ考えて不眠になります。
そこを補い、気血を充足するお薬です。
③柴胡桂枝乾姜湯、柴胡加竜骨牡蠣湯
ストレスによる気の滞りを和らげる柴胡が主薬の漢方薬です。
頭が忙しく、フワフワして地に足が付かない方に使用します。
通じが悪い方には瀉下剤であるダイオウの入った柴胡加竜骨牡蠣湯を、逆にお腹が弱く、冷え性の方や寝汗の著しい方には柴胡桂枝乾姜湯を用います。
●朝起きられない(起立性調節障害など)●
自律神経バランスが失調をきたし、朝になっても夜の神経(副交感神経)のままでいる状態です。
また病院の薬の副作用で副交感神経が朝まで引っ張られ、朝に起きられない方がいます。
そのような場合は掛かり付けの医師に相談しましょう。
①小建中湯
建中湯とはお腹を建て直すの意味です。
お腹を温めて気持ちを落ち着かせます。
子供にも使えます。
②半夏白朮天麻湯
朝からぐるぐる回るめまいで起きることの出来ない人に使用します。
●疲労、倦怠感 、鬱(うつ)●
自律神経バランスが崩れ昼夜が逆転したり、心身の疲労が溜まった状態です。
①補中益気湯
身体の中心、つまり胃などを元気にする処方です。
疲れすぎて内臓下垂気味の人に使用します。
②加味帰脾湯
元気と血液不足の人に使用し、両方を補う漢方薬です。
③十全大補湯
病後の体力回復など、落ちたものを補うのに使用します。
●イライラ、PMS(月経前緊張症)、PMDD(月経前不機嫌性障害)、月経痛(生理痛)、生理不順●
ストレスにより気の流れが滞ると血液を汚し瘀血を生じます。
汚れた血液が子宮に溜まることにより、イライラしたり子宮に炎症を起こします。
①加味逍遙散
ストレスから来る自律神経の失調に用いられます。気滞瘀血の改善策である理気理血(りきりけつ)という処方構成となっています。
②桂枝茯苓丸
駆瘀血剤といって血液の汚れを取り流れを良くする漢方薬です。
主に子宮筋腫や子宮内膜症に使用されます。
●動悸、息切れ●
ストレスを感じると息がうまく吸い込むことが難しくなり、それが元で動悸を生じるケースと、血液が不足し、足りない血液を補おうと心悸更進し動悸を生じるケースの2つがあります。
①柴胡桂枝乾姜湯
心身の疲労により起こるストレス性の動悸に使用します。
牡蠣という生薬(牡蠣貝の貝殻)が気持ちを落ち着かせます。
②加味帰脾湯
足りなくなった血を補う漢方薬です。
●高血圧●
ストレス性のものと、疲労性、加齢性のものがあります。
①釣藤散
頭に血が昇りやすく、主に上の血圧が高くなる人に使用します。
②七物降下湯
体力が消耗しすぎて血圧が上がる人に使用します。
●胃腸障害(ストレス性胃腸炎など)●
ストレスを感じると自律神経の働きにより胃の血流が悪くなり胃炎になります。
また腸の働きが悪くなると下痢や便秘を引き起こします。
①半夏厚朴湯
特にのどが詰まり、胃酸が逆流しやすい人に使用します。
半夏がストレスで詰まったのどの通りを良くします。
②小建中湯
お腹が弱く、下痢をしやすい人に使用します。
●めまい●
めまいにはフワフワしたものと、ぐるぐる回るものの2つがあります。フワフワしたものはイライラしたり、血が不足して起こります。ぐるぐる回るものは水滞といって、水の滞りから起こります。
①抑肝散加陳皮半夏
フワフワしためまいに使用します。
身体の中に生じた風を鎮める生薬が配合されています。
②半夏白朮天麻湯
水滞によるぐるぐる回るめまいに使用します。
●耳鳴り●
耳鳴りはストレス性のキーン、ピーなどの高い音と、疲労や加齢性によるジーやシーなどの蝉の泣いたような音とに区別されます。
①抑肝散加陳皮半夏
キーンといった高い音の耳鳴りを鎮めます。
②六味地黄丸
ジーなどの低い耳鳴りに使用します。
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