冷え性、肩こり、便秘。女性の三大症状と言われるこれらは互いの症状が密接に関係しており、最近は子供や男性にも増えてきています。
特に『冷えは万病の元』と言われる通り、体温が1℃低下すると免疫力が37%低下し、様々な病気の原因に繋がります。
特に冬になると冷え性が悪化し、それが原因で低血圧やニキビといった全身の様々な不調が生じてしまう場合があります。
ここでは特に末端冷え性にスポットを当ててその原因と効果的な改善法を見ていきましょう。
目次(クリックするとスクロールします)
末端冷え性の原因は?
末端冷え性の原因は『物理的な身体の働きの不調』と『機能的な身体の働きの不調』の2つに分けられます。
『物理的な身体の働きの不調』
「物理的な」とはいわゆる目に見えているものです。
例えば、
- 血行不良(ドロドロ血、貧血など)
- 神経系の損傷によるもの
などが挙げられます。
『機能的な身体の働きの不調』
「機能的な」とは、目に見えない身体の働きのことです。
- 身体を温める力の低下(ホメオスターシスの低下)
- 過度のストレス
- 無理なダイエット
- むくみ(水分代謝不良)
- 胃腸の働きの不調(お腹を下しやすい、便秘がち)
などが挙げられます。
それぞれが重なったり、単体で現れたりしますが、手先と足先にスポットを当てて説明します。
手や手の指の冷え性の原因は?
手や手の指の冷えは血行不良が主な原因です。
毎日同じ姿勢でデスクワークに勤めたりする場合、血流が促されずに肩こりを生じます。
特に貧血気味の方は血液の比重が軽く、上手く心臓から上に血液を押し上げられなくなり、首から上の血流が悪くなりなりやすい傾向があります。
肩で滞った血流は鬱積し、疲労物質が溜まるために血液を汚します。
それにより肩から先の手や指が血行不良に陥り末端冷え性に繋がります。
また交通事故などで頸椎を損傷された方は、神経が傷付いている場合があります。
神経は熱さ寒さを感じる器官ですから、そこが傷付くことにより、外気からの熱さ寒さを感受出来づらくなる場合があります。
主に片方の手だけが冷える場合は神経が傷付いている場合があります。
胃腸の働きが悪いと栄養の吸収が悪くなり、各必須栄養素が確保出来ない為に身体が栄養不足になり、新陳代謝が促されない為に熱を産生出来ず、冷え性に繋がります。
そしてまた『機能的な身体の働きの不調』からも冷えは生じます。
例えば、職場の人間関係など過度のストレスにより、身体が防衛反応を示すと頭が熱くなり、手先は冷えてきます。
これは現場から即座に逃げ出せるように身体の機能を自律神経が調節している為です。
また無理なダイエットにより身体の機能が低下すると、身体を温める力自体が低下し、冷え性が生じます。
足や足先の冷え性の原因は?
足先や太もも、お尻の冷えは主に『水分代謝不良(むくみ)』から発生します。
デスクワークなど同じ姿勢を繰り返したりすると、下半身にリンパ液や血液が滞留します。
その場合、心臓に戻る血液量が低下し、行き場をなくした血液がリンパ液へと湿潤変換し、足がむくみます。
ひどくなると下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)といって、ふくらはぎの静脈弁に滞留した血液が原因で瘤(こぶ)が生じ、ますます血流が悪くなる為に痺れなどが出てきたり、見た目も血管が浮き出てボコボコしてきます。
水は冷たさを感受しやすいという性質を持ちますので、下半身がむくむとそこに溜まった水分が冷える為に足冷えに繋がります。
身体全体が冷える場合、身体を温める機能が低下している場合があります。
また水分代謝機能も低下してしまう為、むくみもそうですが、便秘や下痢など胃腸のトラブルも現れ、ますます冷えの原因に繋がります。
男女どちらが冷え性になりやすい?子供は?
最近は男性や子供にも増えてきた冷え性ですが、やはり体質的に女性の方が圧倒的になりやすいです。
ここでは【女性】【男性】【子供】と分けてそれぞれの冷え性になりやすい特徴についてご説明します。
【女性冷え性の体質や特徴】
女性には月経がありますので、慢性的に血液不足になりやすいという傾向があります。
ですから元々貧血気味の方は血液の質が乏しい為に血行不良になりやすいことはわかりやすいでしょう。
また、二種類の女性ホルモン『卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)』で低温期と高温期という体温調節のバランスを保っています。
これが過度なストレスなどでホルモンバランスが崩れてしまうと、体温調節機能も乱れてしまう為に冷え性になりやすいという体質でもあります。
筋肉量が男性と比べて少ないことも冷え性の要因の一つです。
一般的に女性ホルモンの働きにより、女性の身体は筋肉ではなく、脂肪を蓄えやすいように出来ています。
筋肉が熱量(カロリー)を燃やして熱を産生しますので、筋肉量が乏しい女性は熱をうまく生み出せずに冷え性になりやすい傾向があります。
【男性冷え性の体質や特徴】
男性の冷え性になりやすい方は2つのパターンがあります。
1つは痩せていて下痢をしやすい体質の方でいわゆる『ヒョロガリ』と言われるタイプです。
これはお腹が弱い為に栄養の吸収代謝がうまくいかず、さらには筋肉も作られづらくなる為にますます熱を産生できづらくなります。
もう1つで意外な体質が『筋肉ムキムキタイプ』です。
こちらは一つ条件がありまして、『昔ものすごく鍛えていたけど、しばらく全く運動をしなくなった』という方が冷えを感じやすいようです。
これは、例えばサッカーなど激しいスポーツをしていた人は「スポーツ心臓」といって激しい拍動にも心臓が耐えられるように平時からゆっくりした脈でもたくさん血液が流れるような身体になっています。
ようは『運動に適した身体』になっているということです。
このような身体の方が就職や昇格、転職などの生活環境の変化によりパッタリ運動を止めてしばらくすると、筋肉量は多いのにゆっくりした心臓の拍動で血流量が低下するというアベコベな現象が起こります。
分かりやすくいうと『燃費が悪い』ということです。
それにより血流不足に陥り、冷え性を併発します。
元スポーツ選手が身体を鍛えているはずなのに短命な方が多いのはこのような理由があります。
【子供冷え性の体質や特徴】
最近、子供の冷え性が増えてきた理由の一つに『自律神経の失調』が挙げられます。
その原因は便利すぎる現代の生活様式があります。
昔は暗くなったら子供は寝る時間、『寝る子は育つ』と言われてきましたが、今の子供たちは小さい頃からDVDやタブレットなどで脳に刺激を受けたり、塾などで遅くまで勉強したりと昼間の神経が過度に働きすぎです。
昼間の神経、いわゆる『交感神経』は頭に血液を集め、手足を冷やします。
また、寝ている間に成長ホルモンが出て、栄養の吸収と代謝をしていき成長を促しますが、その時間が減ることにより熱の産生能力が低下します。
そのような子供、特に女の子がホルモンバランスが乱れた状態で初潮を迎えることにより、自律神経が失調したりしてより冷え性になりやすい体質になります。
では次にそれぞれの体質や原因別に冷え性に対する予防や対策を示していきます。
冷え性の予防や対策は?
冷え性の対策法について紹介します。
【女性冷え性の予防や対策】
①身体を温める力の低下(ホメオスターシスの低下)で冷える方
ホルモンバランスの安定が必要です。自律神経バランスの乱れからホルモンバランスは乱れやすくなります。
ですから、自律神経バランスを乱す生活習慣の見直し(食生活や早寝早起きなど)が大切になります。
食生活は外食や飲酒、間食を控えバランス良く、決まった時間に食事をする。
夜更かしせずに早寝早起きを心がけ、朝日を浴びる。などに気を付けましょう。
②過度のストレスで冷える方
過度なストレスも自律神経バランスを乱し、冷え性の原因になります。
具体的にはなるべくストレス要因と距離を取る。物理的な距離もですが、精神的な距離を取ることも有効です。
またシャワーではなく、のんびりお風呂に入り神経を休ませる。早く寝る。
などがあります。
どうしても難しい場合、例えば眠れない、動悸がするといった身体症状が出ている場合は心療内科などの病院でお薬を処方してもらっても良いと思いますが、「ちょっとそこまでは…」という方には、ストレスに良いと言われる漢方(高麗人参)やハーブ(セントジョンズワート)などを
サプリメントとして取り入れるという方法もあります。
③無理なダイエットをしてから冷える方
過度の急激な自分だけの考えで行うダイエットは、体調不良を招き、成功しても痩せたというよりは「痩せこけた」という病的な状態を引き起こしたりします。
身体に必要な栄養も不足する為、それを補おうとリバウンドする可能性も高いです。
この身体に必要な栄養が無くなった状態になる為、さらに冷え性は加速化します。
適切なダイエットを行う為には、ダイエット外来の病院を探したり、ジムやヨガスタジオなどのダイエット相談の専門家の意見を聞いてから行いましょう。
⑤むくみ(水分代謝不良)で冷える方
一時期に『水ダイエット』が流行った為に1日2リットルの水を今も飲み続けている人が稀にいますが、むくみやすい方にとって過度な水分補給はむくみを促進させます。(過度な飲酒も同じです。)
なぜならば、これは『体内酵素(たいないこうそ)』との関係によるからです。
水も体内に入ると生体水に代謝が必要になります。
その時に大量の水分を摂取していると、同じく大量の消化酵素、代謝酵素が必要になります。
元々、体内の酵素量が多い人はいいのですが、不足しがちな現代人には代謝を良くする為の水分がかえってむくみを生じさせ、それが冷えに繋がる場合があります。
ですから体質は人それぞれですので、むくみやすい身体の方は逆に水分を控えるようにしましょう。
⑥胃腸の働きの不調(お腹を下しやすい、便秘がち)
お腹の働きが弱い方は下しやすかったり、便秘になりやすかったりします。
下しやすい方は栄養の吸収や代謝機能が低下する為に熱を産生しづらくなります。
また便秘がちの方は、滞留した内容物から血液を汚しやすく、ドロドロ血が血行不良を引き起こす為に結果として冷え性を引き起こします。
それを改善する為には腸内環境の改善が必要です。
ヨーグルトなども良いですが、日本人ならお味噌汁や甘酒などの発酵食品が身体を冷やさないので良いでしょう。
あまりにガンコな便秘ならば、最初は下剤を併用し、腸がスッキリした状態にしてから腸内環境を整えることも大切です。
お薬を使う場合は専門家に相談してから使用しましょう。
【男性冷え性の予防や対策】
- 身体を温める力の低下(ホメオスターシスの低下)
- 過度のストレス
- 胃腸の働きの不調
身体が痩せていて力が疲れやすく冷えやすい男性の場合は上記の3つが複合的に絡み合っているケースが多いです。
まずは食生活を見直しましょう。
『お料理男子』という言葉もありますが、生活が忙しいと日々の食事は外食やコンビニ、さらにスタミナを付けようと揚げ物やお肉などが多くなります。
これらはおなかに著しい負担を掛けます。
一番簡単なのは、そばに実家がある場合にはお母さんに食費を渡して作ってもらいましょう。
それが難しい場合はなるべく自炊を、さらにそれも難しい場合にはせめて揚げ物や油もの、焼肉などは避けて、煮物中心で消化に優しいものを摂り入れてください。
カレーやキムチなどの辛いものは腸内細菌を殺しますので、止めましょう。その上で、胃腸薬を併用します。
具体的にはエビオス錠やビオフェルミンなどの腸内環境を整える胃腸薬が良いとされています。
(※医薬品を使用する場合は専門家に相談してからにしてください)
あと早寝早起きは必須です。
少しずつでいいですから、夜のスマホやゲーム、PCは控えるようにして早く寝るようにしましょう。
これはストレスに強い身体を作る為です。ストレス解消ばかりに目を向けることなく、ストレスに耐え得る身体を獲得しましょう。
職場などのストレスが強い場合は心療内科などに受診するのも一つの方法です。
ストレスでイライラして眠れず、朝から倦怠感や鬱症状が出るなどの場合はそこに適した医薬品があります。
またそこまではいかない方には抗ストレス作用や恒常性維持機能(ホメオスターシス)を高めると言われている漢方(高麗人参や霊芝)、気分を明るくさせるハーブ(セントジョンズワート)や気持ちを落ち着かせるハーブ(ラベンダーなど)、サプリメントを使用するという方法もあります。
昔、激しく身体を鍛えていて、冷え性なんて無かったのに運動をしなくなってから冷え性になったという方は、またその運動を少しずつ取り入れていきましょう。
具体的には、一回20分以上の有酸素運動を週に二回、半年以上続ければ治ります。
この時に、ただジョギングや筋トレも悪くはないのですが、そのスポーツに特化した筋肉というものがありますので、出来ることなら昔取り組んだスポーツをした方がよいでしょう。
効率良く身体を温めることが出来ます。
【子供冷え性の予防や対策】
子供の冷え性の予防、対策はとにかく規則正しい生活と食事です。
具体的には習慣をご褒美に変えることです。
毎日ゲームやスマホをいじるのではなくて、普段は少しにして休みの日にさせてあげる。
忙しすぎるのであれば、塾や習い事を見直す。
好き嫌いを少しずつ無くす。もし外食やコンビニが多いなら、なるべく手料理を心がける。
具体的には、昭和初期の子供の生活様式に戻すイメージです。
その全てを現代に当てはめるのは中々難しいですが、たくさん食べて、陽の光りの下で駆け巡るように遊ぶ生活になれば、自律神経バランスは整い、自然と冷え性も軽減されていきます。
極端な虚弱体質の場合は漢方で体質改善という手段もありますので専門家に相談してみましょう。